癒しの贈り物     

   

食の持つ透明な力とは


  現代ほどについて関心を持つことの多い時代はかつてなかったように思います。テレビのスイッチを入れれば必ずと言っていいほどに関連した番組が流れてきます。そして豊満な体型をしたタレントがいろんな土地の名物を口にし、それが如何にうまいかを顔の表情や言葉で表現します。見ている方もついポカリと口をあけ一緒に食べている気分になったりします。

女性はストレスが溜まると食べて解消するという話をよく聞きますが、食も本能の一つですから、それが満たされて気分がよくなるのは理にかなっている訳です。

食は私たちの生活に密着しているがゆえに、その癒しの効果という部分については案外意識していないのかもしれません。そもそも私たちにとって食とは何なのでしょうか?それは究極のところ生命そのものだと言えないでしょうか。

 ここにある一人の女性がおります。佐藤初女(はつめ)さん85歳。青森県弘前市は岩木山の麓に「森のイスキア」を開設し、心をこめた手作りの料理で訪れる人をもてなしています。1995年、龍村仁監督のドキュメンタリー映画「ガイアシンフォニー(地球交響曲)第二番」に出演。雪深く残る裏庭から芽を出したばかりのフキノトウを採ってきて丁寧に調理する姿が爽やかに映し出されていました。

 私は直接佐藤さんに話しを聞く機会があり、その時訥々と話される一言一言に限りない優しさと深い哲学を感じ取ることができました。佐藤さんは、「食は生命」と言うテーマで語ってくださいました。

 近頃の様々な事件を聞くと、食がきちんと正しくとれていないと感じるのだそうです。決して美食でなくていいから心が入ったものを食べて欲しいと感じ、自分のところに訊ねてきた人には必ずオニギリをご馳走するのだとか。

 あるとき、映画を観た千葉に住む子供がどうしてもそのオニギリを食べてみたいと言ってとうとう夏休みにやってきたという話や、自閉症の子が来たときは、なんでも拒否していたが、オニギリの包みを渡した途端表情が明るくなったという話など、これまで出会った様々な人たちとイスキアで提供したオニギリや他の料理との関わりを話してくださったのです。

 中でも強く心に残っているのは、「透明」の話でした。いろいろな食材も生命として考えたとき、どのように調理したら一番生かすことになるのかと考えて作っているのだそうです。そして、透明の話です。

 緑の野菜をゆでるとき、大地に生えていた時よりも美しく輝く時があるのだそうです。それがつまり、透き通るとき。そのときがもっともおいしいのだと佐藤さんはおっしゃいます。瞬間を見逃さないことが大事なんですね。

 そして話は、母乳へと移ります。母乳も透き通っているのがよいのだそうです。更に、セミも脱皮するときは透き通ります。生命を移し変える瞬間、それが透明なんだそうです。

 あるお寺のお坊さんの話で、焼き物をしているが焼き物が一番いいときは、窯の中で透明になるのだそうです。透明というのはごまかしがききません。全てがありのままです。しかし、ありのままを出せるということは実はもっとも強いことなのかもしれません。

 佐藤さんの自慢の(本人は決して自慢はしていませんが)オニギリを僕はまだ食べたことがありません。でも、僕自身は瀬戸内海の天塩を使って、少し堅めに炊いたご飯を手に取り、心をこめたオニギリを作ってよく食べます。天塩だけでご飯粒は手につかないのですよ。ですから水で手をぬらすこともなく握ります。僕はゴマをまぶすのが好きなのですが、のりを巻くのももちろんOK子どもたちも喜んでおいしいと言ってくれます。

 癒しの食とは、決して自らが食べるということではなく、生命を移し変えたものを喜んで食べてもらうという行為の中に在るのです。
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